一年中食べられる時代に、あえて旬を選ぶ理由
私たちの食卓には一年を通して多種多様な野菜が並びますが、野菜には本来それぞれ「旬」と呼ばれる自然な生育の時期があります。旬の野菜は、自然の気候や土壌の条件がその野菜に最も適している時期に育てられるため、栄養価が高く、味や香りも格別です。そのうえ、収穫量も多くなることから、価格も比較的安定しやすいという利点があります。
たとえば夏。暑い季節になると、トマト、きゅうり、ナス、ピーマン、ゴーヤ、とうもろこしなどの夏野菜が一斉に出回ります。これらの野菜は強い日差しと高い気温の中でよく育ち、たっぷりと太陽の光を浴びることで、味が濃くなり、水分やビタミンも豊富になります。旬のトマトは酸味と甘味のバランスがよく、冷やしてそのまま食べるだけでも美味しく、夏バテ防止にも役立ちます。ナスやピーマンは油との相性も良く、焼いたり揚げたりすることで、香ばしさと夏らしい風味を楽しめます。

しかし、現代ではこうした夏野菜を冬でも目にすることができます。これは、ビニールハウスなどを用いた施設栽培(ハウス栽培)や、輸入品の活用、さらには高性能な貯蔵技術の発達によって、季節に関係なく野菜を供給できるようになったためです。たとえば、冬の寒い時期でも温度や湿度を管理したハウス内でトマトを育てれば、一定の品質のものを出荷することができます。また、きゅうりやパプリカなどはオランダや韓国などから空輸・海上輸送され、日本の市場に流通しています。
こうした「旬ではない」野菜も、食の選択肢を広げ、日常の食生活を支えるうえで重要な役割を果たしています。いつでもトマトがサラダに使える、炒め物にきゅうりを加えられるという利便性は、現代の生活には欠かせないものとなっています。
ただし、そういった野菜は旬のものと比べて、味がやや淡白だったり、香りが薄かったりすることがあります。また、温室の加温や長距離の輸送には多くのエネルギーを要するため、環境負荷が大きくなるという側面も見逃せません。価格面でも、旬に比べて高価になることが一般的です。
だからこそ、季節ごとに「今が旬」の野菜を選ぶことには、大きな意味があります。旬の野菜は、その時期の身体の調子にも合いやすく、たとえば夏野菜は体の熱を冷ましたり、水分を補ったりする効果があると言われています。加えて、季節感を食卓に取り入れることは、料理に彩りや楽しさをもたらし、心の豊かさにもつながります。
通年で手に入る野菜の恩恵を享受しつつも、「旬を味わう」という感覚を大切にすることで、私たちは自然のリズムとより調和した暮らしを送ることができるのではないでしょうか。
