The Effect of Inhaled Corticosteroids on Pneumonia Risk in Patients With COPD-Bronchiectasis Overlap A UK Population-Based Case-Control Study
COPD-気管支拡張症オーバーラップの患者における吸入ステロイドの肺炎リスクへの影響
- 背景: COPD患者の中には気管支拡張症を併発するケースがあり、これらの患者は肺炎のリスクが高まる可能性がある。この研究では、吸入ステロイドの使用がこのリスクにどのように影響するかを評価している。
- 研究データ: Clinical Practice Research Datalink (CPRD) というデータベースを使用。このデータベースは、英国の一般医療患者の医療記録を提供している。
- 研究デザイン: COPDの診断を受けた患者を特定し、その中から気管支拡張症を持つ患者を抽出した。吸入ステロイドの使用歴、その他の健康情報などを基に、肺炎のリスクを評価した。
- 結果:
- COPD患者の特徴:COPDのコホートには316,663人の患者が含まれていた。中央値の年齢は67.9歳(四分位範囲、58.9-76.5歳)で、52.6%が男性であった。患者の48.1%がコホートの入会時にICSを使用しており、2.5%が気管支拡張症を持っていた。
- ネストされたケースコントロール群の特徴:COPDのコホートから、152,243人の患者がICS新規使用者のコホートとして適格であった。第一のネストされたケースコントロール群には20,195人の患者と61,121人のマッチした対照参加者が含まれていた。第二のネストされたケースコントロール群は、COPD-気管支拡張症の重複と最近の血中好酸球数を持つ患者のみから構成され、この群には521人の患者と2,006人のマッチした対照参加者が含まれていた。第一のネストされたケースコントロール群の患者は、平均年齢が77.6歳(四分位範囲、70.0-84.0歳)で、58.4%が男性であった。第二のネストされたケースコントロール群の患者は、平均年齢が74.3歳(四分位範囲、67.5-79.5歳)で、53.6%が男性であった。
- ICSと肺炎リスクの関連:吸入ステロイド(ICS)の使用は、COPD患者の肺炎リスクを増加させることが知られている。特に、COPDと気管支拡張症の重複を持つ患者において、このリスクはさらに高まる可能性が考えられた。研究の結果、84,316人のCOPD患者の中で、ICSの使用は肺炎のオッズを増加させることが示された(調整後のオッズ比 [AOR] は1.26、95%信頼区間 [CI] は1.19-1.32)。しかし、この効果はICSの使用から180日以内に限られていた。興味深いことに、気管支拡張症の存在は、既に高まっている気管支拡張症関連の肺炎リスクをさらに増加させることはなかった。具体的には、COPDと気管支拡張症の合併を持つ患者において、ICSの使用による肺炎リスクの増加は認められなかった(COPD-気管支拡張症: AORは1.01、95% CIは0.8-1.28)。さらに、血中好酸球数(BEC)がICS関連の肺炎リスクに影響を与えることが示された。具体的には、低いBECは肺炎と有意に関連していた(BEC ≤ 3 × 10^9/L: AORは1.56、95% CIは1.05-2.31)。
- ディスカッション:
- ICSの使用と気管支拡張症は、入院を必要とする肺炎のリスクを独立して増加させるが、COPD-気管支拡張症の重複を持つ患者においてICSの使用からさらなる増加は見られない。
- COPD-気管支拡張症の重複を持つ小さなコホートにおいて、高いBEC(血中好酸球数)は、ICS関連の肺炎リスクの増加から患者を保護するように見える。これは、COPDを持つ以前のコホートで見られた結果と類似している。
- リミテーション
- この研究では、COPDと気管支拡張症が合併していると診断を受けた患者のみを対象としている。
- 研究には、気管支拡張症の重症度や各患者の細菌学的データは不明であった。
- 研究は、入院を必要とする肺炎の増加のみを評価しており、入院を必要としない肺炎の評価は行っていない。
- この研究は観察的な性質を持っているため、因果関係の主張は避けられている。
