呼吸機能検査(スパイロメトリー)について
日本呼吸器学会から5/17に「ウィズコロナにおける呼吸機能検査の実施について」というステイトメントが公表されたことはご存知だと思います。https://www.jrs.or.jp/covid19/file/0dea8364c5804ba32bdf6772186342b48d1cebc0.pdf COVID-19流行拡大防止のため検査が控えられていた呼吸機能検査が、
COVID-19 が 5 類感染症に位置づけられるのに伴い、海外学会の提言等も踏まえ、従前のように積極的な呼吸機能検査の実施を検討するよう提唱されました。もちろん、COVID-19の兆候がある場合は実施は不可です。
私事で恐縮ですが、過日人間ドックにいったのですが、3年ぶりに呼吸機能検査が復活していました。
呼吸機能検査は喘息やCOPDなどの早期発見と適切な治療介入の判断に必要なものであり、また術前の呼吸機能検査は麻酔および手術実施の可否の判断や術後肺合
併症のリスク評価に重要です。しかしながら、一般的にというかルーチンの検査にはなっていないのが現状です。
その理由を愚考してみると、
・検査には一定の時間と手間がかかるため、忙しい医療施設では実施が難しい場合があります。
・一部の医療従事者に呼吸機能検査の重要性や有用性についての認識が不足している可能性があります。
・ほかの生理機能検査より呼吸機能検査は診療報酬が低く、医療機関は検査を積極的に実施する動機が低くなる可能性があります。特に、呼吸機能検査は機器の導入コストや維持コスト、操作者のトレーニングコストなどを考慮すると、報酬が低いと採算が取れないと考えている場合があります。
呼吸機能検査は非侵襲的な検査方法です。患者が特定の方法で息を吹き出すことによって、肺の容量や流れの速さを測定します。検査中、患者はマウスピースに息を吹き込むだけで、体内に器具を挿入することはありません。したがって、スパイロメトリーは非侵襲的な検査とされています。また、通常はディスポーザブルのフィルターを使用して、毎回交換してるので感染症予防の配慮もされています。
しかし、患者の体調や状態によっては以下のような負担や不快感を感じることがあるかもしれません:
- 呼吸の努力:患者は深く息を吸い込み、力強く吹き出す必要があるため、これにより疲れや息切れを感じることがあります。
- 繰り返しの測定:正確な結果を得るために、数回の測定を繰り返すことが推奨される場合があります。これにより、一時的な疲労感を感じることがあるかもしれません。
- マウスピースの不快感:マウスピースを口に咥えることによる不快感や違和感を感じることがあるかもしれません。
これらの負担は一時的であり、検査後すぐに回復することが多いです。しかし、心臓や呼吸器に既存の問題がある患者は、検査前に医師に相談することが重要です。
呼吸機能検査が普及すると、どんなメリットがあるかというと
患者にとっては、病気の早期発見につながり、早期治療をすることにより疾患の予防や治癒、あるいは進行を遅らせることが可能となります。
社会全体にとっては、医療抑制、労働生産性の維持、公衆衛生(健康意識)の向上などの大きなメリットがあると思います。
ただし、検査の普及を促進するためには、いろいろなハードル、具体的には啓発活動や教育、設備の整備、医療従事者のトレーニングなど、多角的なアプローチが必要です。すでに、多方面の方々が普及のために尽力されており、近い将来、一般的な検査として実臨床で認識されることを切に願っています。
