在宅勤務による運動不足の影響は?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(大流行、感染拡大)に対応し、「テレワーク」(在宅勤務)を採用する企業が増加しました。第5類感染症に移行した現在でもCOVI-19流行前に比べると在宅勤務の機会は増えているといえるのではないでしょうか。社内の会議はインターネットを介したものに切り替えられ、取引先への商用での訪問の機会も極端に減少しています。生活習慣ががらりと変わったという人も少なくないのではないでしょうか。自宅にいる時間が長くなり、身体活動量が減ってしまったという人が多いと考えられます。
筑波大学大学院が健康機器メーカーのタニタが東京都内にオフィスがある大手企業の社員およそ100人(平均年齢48歳)を対象に行った調査を分析したところ、新型コロナウイルスの影響が現われる前は、1日の歩数は平均約1万1,500歩だったものが、テレワークに切り替えた社員は、その歩数が29%減り、座っている時間も長くなっていたことがわかりました。中には1日の歩数が70%減少し、1日2,700歩程度と、厚生労働省が推奨している1日8,000歩を大幅に下回るケースもあったとしている。(出典:筑波大学大学院人間総合科学研究科 久野研究室)テレワーク・自宅待機による運動不足で生活習慣病のリスク | トピックス&オピニオン | 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 (seikatsusyukanbyo.com)
これらの情報は、在宅勤務が歩数に与える影響を示しており、運動不足になりやすいことを示唆しています。運動不足は肥満やメタボリック症候群、糖尿病、高血圧などのリスクを高める可能性があります。
また、動かないと筋肉が減少するメカニズムについての研究が神戸大学で行われており、筋肉を動かさないと筋肉内のカルシウム濃度が低くなり、これが筋肉を減らす引き金になることが明らかにされました。この研究は「Journal of Clinical Investigation」に掲載されています。筋肉が減少すると、運動能力が低下するだけでなく、様々な病気にかかりやすくなり、寿命の短縮にも繋がると報告されています。神戸大学の研究記事
また、東京理科大学の准教授である柳田信也先生によると、筋肉は使わないと1日に1パーセント減少するとされています。千葉県野田市の公式ウェブサイト
したがいまして、在宅勤務者は意識して身体活動量を維持する必要があると思います。ただ、一方で在宅勤務者は交感神経が抑制され、心拍数などは通常の勤務者より低くなるという報告もあり、良い面もありますので、一概に在宅勤務は健康によくないとは言えないのではないでしょうか。
