Trends in hospitalizations for asthma during the COVID-19 outbreak in Japan

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33065368

COVID-19感染流行時の喘息患者の入院傾向

 気管や肺に感染するウイルスは一般に喘息を悪化させることが知られている。COVID-19も同様に喘息のコントロールを増悪させると考えられ、医療関係者の間では、COVID-19流行当初、喘息の入院患者数が増加する可能性が危惧されていた。ただ、その後の欧米の報告では、喘息による救急外来受診者数や入院患者数が逆に減少したという報告も出てきていた。しかしながら、これらの報告は、小規模な研究であり、この傾向が他の地域でも当てはまるかどうか、大規模なデータベースを使用した研究が待たれていた。そこで、本研究では、MDVの保有する大規模診療データベースを用い、2017年1月〜2020年5月の喘息を主病名(最も医療資源を投入した病名)に持つ入院患者数の週毎の推移が継続的に観察できた全国272のDPC病院を対象に調査した。

 その結果、例年春先(第9週=3月上旬以降)から初夏にかけて、喘息の入院患者数は増加する傾向にあるにもかかわらず、今年は逆に減少する傾向であったことが認められた(図)。年と週によるトレンドを統計学的に調整した分析では、2020年第9週以降の喘息による平均入院患者数は、2017年から2019年の同時期と比較して0.45倍(95%信頼区間 0.37-0.55; p<0.001)になっていた。この傾向は18歳未満の子ども、成人共に認められた。

 COVID-19の流行自体が喘息のコントロールを悪化させた可能性は残るが、それ以上に感染症の予防行動やマスク着用によるアレルゲン(花粉など)への暴露の減少などが、社会全体でみたときに喘息発作を低減させたと考えられる。本研究において認められた劇的な喘息による入院患者数の減少は、個人や社会が生活様式を変えるだけで喘息による入院の大部分を防げる可能性があることを示唆している。喘息の良好なコントロールのために、予防行動や生活環境への配慮の重要性が再認識させられる。

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