コメ価格が異例のスピードで上がっている理由?
5 kg袋の小売価格が1年でほぼ2倍 — 主要ブランドは 5,000 円台に到達しており、高止まりの状況が続いています。ただ、その原因についてあまり整理されていない感じがします。原因があいまいだと対策もに十分になると思いますので、私見もはいりますが整理したいと思います。
原因は単純に一つではなく、いろいろな要因が絡んでいると考えています。
まず考えられるのは供給側の要因です。異常気象による減収 2023年の酷暑と高温障害で粒が充実せず、23年産は約40万 t(平年比4%強)不足。これが24年の流通量にそのまま響いています。
東洋経済オンラインによると、「実質減反」継続 生産調整(減反)と高米価維持策で作付け面積が長期的に右下がり。構造的に余力のない市場に気候ショックが直撃したと分析しています。
また、24年夏の品薄をしのぐため、本来25年3〜4月に出回るはずの新米を「先食い」した結果、民間在庫は年明け時点で ▲43〜44 万 t に落ち込み、25年春は完全な薄商い状態になりました。それを緩和するため、政府は備蓄米の放出を決定しましたが JA経由に限定 されたため小売現場まで届くのに時間がかかり、価格抑制効果がいまだ出ていません。決してJAがダメと言っているのではないです。
あと、生産コストも高止まりの状況が続いています。肥料は2021〜24年で平均 +50 %、燃料や資材も上昇。小規模水田では採算が取れず「作っても赤字」の声が多いようです。つまり、コメが値上がりしていても生産者の農家が儲けているわけではないようです。
需要サイドの要因として考えられるのが、インバウンドの増加です。訪日客 2025年4月の外国人旅行者 390.9 万人(過去最高)で、外食・みやげ需要が一気に増加しています。外食・観光業のフル稼働 コロナ禍で落ち込んだ業務用米の仕入れが V 字回復し、ホテル・居酒屋が新米シーズン前に買い占めに走ったようです。また、 ウクライナ戦争で小麦価格が高止まりし、家庭・外食ともに「パンよりご飯」へ一部シフトが進行し、コメの需要が上昇しました。
また、インドが 2023年7月に非バスマティ米を禁輸 → タイ指標価格が2割上昇、そのまま高止まりしました。輸入米の代替効果が薄れ、国内米の「逃げ場」がなく値決めの上限が切り上がちました。世界全体をみるとコメの在庫率はまだ高いですが、日本は円安で輸入コストがかさみ、買い付けに二の足を踏む状態が続いています。
ほかの要因として、マスコミがコメ不足、高騰をあおって心理的に買いだめが加速したように思えます。ほかにも、SNSで「南海トラフ巨大地震に備えて米を備蓄せよ」というデマが拡散し、家庭用のまとめ買いが加速したように思えます。すくなからず、流言飛語によりコメ需要が高まった可能性は大きいと思います。
また、価格が上がるほど流通業者が在庫を抱え込み、「先高」期待が自己強化ループを生む構図になっていると思います。マスコミはそういった火事場泥棒的な業者を公表して、市場から排除することが重要だと思いますが、それはなされていないのが現状です。いろいろな角度からの取材をもとに、真実をあぶりだすのはいろいろなリソースがかかりますが、それを突き詰めていいただきたいと思います。
エンタメ情報やグルメ情報もいいですが、報道に関して、とくにTVはもっと力を入れてもらいたいと、個人的には思っています。
話はそれましたが、私たちができることは何でしょうか?
食料安全保障の議論に関心を持つのが需要だと思います。「減反の是非」「政府備蓄の運用」「円安による輸入影響」などは政策の問題ですが、
無関心が続けば、根本的な改善は見込めません。農水大臣が更迭されましたが、大臣が変われば解決できる問題ではないと思います。
面倒とは思いますが、地元選出議員への意見提出や、報道・SNSでの発信を通じて「消費者の声」を可視化できます。
あとは、コメに偏りすぎない食生活(パン、雑穀、豆類の活用)や地産地消・旬の食材の重要性を家庭内で共有することです。
食文化の幅を持たせることで、将来的な供給ショックにも耐性のある社会が作れますが、コメ消費が減少すれば、減反、生産量減少、価格高騰という負のスパイラルが起きますので、バランスが難しいところだと思います。
