誤嚥性肺炎ってコモンディジーズ?
まず、コモンディジーズについてですが、定義があるのか調べてみましたが、明確なものはなさそうでした。しかしながら、概念としては皆さんが思っているであろうものと大きな違いはないかと思います。日本内科学会から、一般医が日常診療で遭遇する頻度の高い疾患の診療に際して参照できる形で、コモンディジーズブックが発刊されています。この本はコモンシンプトンから考える場合とコモンディジーズから考える場合に分けて編集されています。
さて、閑話休題、表題に戻りますが、一般的な健康な成人の中では、誤嚥性肺炎は発症することは多くありません。したがって、コモンディジーズと言えないと思います。しかし、コンテキストによって「コモンディジーズ」としての認識される場合があると思います。誤嚥性肺炎は、高齢化社会を背景に増加傾向にあり、特に高齢者ケアの現場での認識や予防が重要視されています。そのため、高齢者のケアや医療の現場では「高齢者限定コモンディジーズ」として認識されているのではないでしょうか?
では、本邦における疫学的な報告をみると、https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2022/3466_05
- 日本における肺炎死亡者の多くは65歳以上の高齢者であり、2020年の人口動態統計では、肺炎と誤嚥性肺炎の死亡者数を合わせると、日本人の死因の第4位になりました。
- 高齢肺炎のほとんどは加齢に伴う嚥下機能低下(Presbyphagia、老嚥)を背景とした誤嚥性肺炎であると考えられています。
- 誤嚥性肺炎入院患者のリアルワールドの研究によれば、入院が必要な肺炎の66.8%、院内肺炎の86.7%が誤嚥性肺炎であるとされています。
- 診療報酬データベースを用いた研究によれば、2010年7月~2012年3月の間に誤嚥性肺炎で入院した患者は25万5394人(平均年齢:82歳)であり、半数以上の患者が入院中に摂食機能療法を受けておらず、自宅退院もできていないとのことです。
一方、高齢者は複数の疾患に罹患していることが少なくなく、誤嚥性肺炎が他疾患に悪影響を及ぼすことは容易に想像がつきます。たとえば、誤嚥性肺炎はCOPDの増悪を誘引して、生命予後にも悪影響をおよぼします。したがって、誤嚥性肺炎を予防することは、患者の生命を守り、QOLを維持することにつながると思われます。
では、予防するにはどんな方法があるかと言うと、
- オーラルケアを適切に行うことで、口腔内の細菌の増殖を抑え、誤嚥性肺炎のリスクを低減することができます。特に、高齢者や寝たきりの患者、嚥下機能が低下している患者など、誤嚥性肺炎のリスクが高い人々にとって、日常的なオーラルケアは非常に重要です。
- また、摂食に関しては食物の固さや粘度を調整することで、嚥下しやすくすることができます。液体の摂取時にはストローを使用することで、誤嚥のリスクを減少させることができます。あと、食事時には適切な姿勢をとることで、誤嚥のリスクを減少させることができます。例えば、食事時には背筋を伸ばして座る、食物を口に入れる前に頭を前に傾けるなどの工夫が有効です。
- ほかの予防方法としては、一般的ではないですが嚥下機能のリハビリテーションや誤嚥のリスクがあるような薬剤(アマンタジン、ACE阻害薬、抗不安薬や抗うつ剤など)の見直しなどがあげられます。
さいごに、
高齢者は免疫機能が低下しているため、感染症にかかりやすく、またその回復も遅くなります。また、誤嚥性肺炎は高齢者のQOLを著しく低下させる可能性があります。入院やリハビリテーションが必要となり、日常生活の自立が困難になることもあります。
以上の理由から、高齢者における誤嚥性肺炎の予防は非常に重要であり、日常的なケアや注意が必要と考えられます。
