喘息と間違われやすい声帯機能不全(VCD)について

声帯機能不全Vocal Cord Dysfunction, VCD)と喘息は、いずれも呼吸困難を引き起こす疾患ですが、原因、症状、治療法が異なります。これらの疾患はしばしば混同されることがありますが、正確な診断と治療が重要といわれています。

声帯機能不全は、声帯が適切に開かない、または予期せず閉じることによって呼吸困難が生じる状態です。これは、特に吸息時に呼吸の障害を引き起こします。VCDの典型的な症状には、呼吸困難、喘鳴(ヒューヒューという音)、咳、声のかすれなどがあります。VCDはしばしばストレスや不安に関連していると考えられています。また、VCDと喘息は共存することがあり、一方がもう一方の症状を悪化させることがあります。例えば、喘息患者は気道の過敏性が高まっているため、VCDの発作を引き起こしやすくなる可能性があります。また、VCDの症状は喘息と非常に似ているため、診断が難しくなることがあります。VCDは、若い成人や思春期の女性に多く見られる傾向(20-40歳,⼥性>男性(3:1))がありますが、全年齢層と性別に関係なく発生する可能性があります。また、VCD患者の73%はパニック障害や不安神経症などの精神疾患をもち、GERD,副⿐腔炎,⾃律神経障害などが合併することもあると報告されています。Am Fam Physician. 2010 Jan 15;81(2):156-159.Vocal Cord Dysfunction | AAFP

日本では、VCDの診断には呼吸機能検査や喉頭鏡検査が用いられることがあります。しかし、VCDは喘息や他の呼吸器疾患と症状が似ているため、診断が遅れるケースも報告されています。
日本におけるVCDの治療には、呼吸法の訓練、声の療法、ストレス管理技術が含まれるます。一方、喘息の治療には、炎症を抑えるための吸入ステロイド、気道を開くための長期作用型β2刺激薬、短期的な症状緩和のための短期作用型β2刺激薬などが使用されますのでアプローチは異なります。

日本におけるVCDの疫学研究は、まだ限られており、より多くの疫学データと症例報告が必要です。VCDの正確な診断基準の確立や、症状の管理と治療に関するガイドラインの開発が今後の課題となっています。また、VCDの認識を高め、早期診断と適切な治療へとつなげるための教育と普及活動も重要です。

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